婚約破棄された追放聖女は、皇太子と二度目の婚約をする【短編】
 陛下には皇太子殿下しか男児がいないはずよね? 陛下の即位の時にもめたの? 私が生まれる前のことだから全然知らないけれど……。今陛下は五十歳くらいだから、三十歳くらいのときに王位を継承したんだよね。皇太子殿下は今二十歳だから、同じようにあと十年ほど、三十歳くらいで戴冠するのかな? 別にどこにも問題がないような気はするけれど……? 
「本日の礼拝は終わりじゃ。新しき聖女の祈りにより、そちらの願いも神に届いたであろう」
 陛下は礼拝堂に集まった貴族に声をかけると、王妃様、皇太子殿下、ソフィア様とともに壇上を去った。
「素晴らしい光だった。これで願いがかなったのだろうか、長雨に苦しんでいる領地の雨が止んだのか確認せねばならぬ」
「疫病が蔓延している村の様子を調査せねば」
「作物が枯れる謎の現象が収まっていればいい。早速領地の視察に行くよう準備しなければ」
 貴族たちも、次々に礼拝堂を後にした。
 えーっと、私は、どうしたらいいんでしょうね? 
 婚約破棄されて、聖女でもないよと言われたのだから……。出て行ってもいいのかな? 
 ……それとも、聖女を語った罪でなんか罰せられる? 
「おい、いつまでいるつもりだ偽物聖女! さっさと礼拝堂から出ろ」
 乱暴に腕をつかまれ、礼拝堂から連れ出されてそのまま城壁の外へと追い出された。
 罰せられなくてよかった。

 お金もないし、荷物もない。でも、行く当てだけはある。
 城を出てから、目的地に向かって暫く歩いてから立ち止まる。
「東神殿に戻っても、レオン様はがっかりするかな……、私が聖女じゃなかったと知ったら」
 聖女だと言われたのは一年前の十六歳。
 十二歳で巫女として働き出して、十五歳になったら巫女としてレオン様と各地の神殿に向かって行う出張奉仕を一年間していた。
「あのちび助が立派な巫女になったもんだ」
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