婚約破棄された追放聖女は、皇太子と二度目の婚約をする【短編】
 ソフィア様の言葉に、皇太子殿下が私を見た。
「ああ、庶民にしては、力が強い巫女ってことだな。庶民的には聖女級なんだろう」
 殿下の言葉に、一部の貴族から笑いが起きる。
「庶民としてはありえない力を持っていたため、レオン様もお間違えになったのでは?」
 貴族の言葉に、陛下が首をかしげる。
「いや、しかし神託と申しておった。レオンが神託だと偽るというのは考えられぬ」
「父上、神託など、どうとでも解釈できるんじゃなりませんか? 今回も、大地とともに生きる娘がどうのとかって言われただけなんでしょう?」
 陛下が頷いた。
「『大地とともに生きる娘、救いの力を持つ』だ。神託が下りた数日後に先代の聖女が急逝したこともあり、救いの力を持つというのが聖女を示していると解釈された。それで神殿で大地とともに生きる娘を探しミラが聖女と認定されたのじゃ」
 殿下がふんっと鼻で笑った。
「茶色の髪に茶色の目、それが大地の証とでも? ばかばかしい。こんなさえない娘が何を救うっていうんですか? 少なくとも、僕はミラと婚約させられて絶望しましたよ? 全く救われなかった」
 殿下の腕を組んでいるソフィア様がくすりと笑った。
「それに比べソフィアは僕の女神だ。ソフィアが本物の聖女だと僕はすぐに確信したよ」
 殿下がうっとりした顔で、ソフィア様を見ている。
「殿下、ソフィア様が聖女だと確信した理由をお伺いしても?」
「確かにな。ミラ様が偽物だったとしても、ソフィア様が本物であるという確証にはならぬ」
 貴族の言葉に、陛下も咳ばらいを一つしてから口を開くき殿下に言葉を促した。
「西の神殿長が数週間前に神託を受けたと報告してきた『過ちの者から正しき者に引き継がれる』と」
 殿下がそう言うと、ソフィア様がすぐに礼拝堂にいる貴族たちに高らかに宣言する。
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