婚約破棄された追放聖女は、皇太子と二度目の婚約をする【短編】
「ええ、そうなのですわ! 西の神殿長は、その神託を受け、すぐに私に声をかけてくださいました。東の神殿長が誤った聖女を立てたことを示しているのだと。正しい聖女は私に違いないと。それで、急ぎ王宮に参った次第ですわ。私こそ、本物の聖女ですわ」
 王妃様がうんうんと頷いている。
「ですが、先代の聖女様が亡くなり、新しくミラ様が聖女となり一年は何事もなく過ぎていきました。もし聖女が偽物だったとしたら、国が乱れていたのでは?」
「そうです。毎日の祈りのお勤めに問題があったわけではないのでしょう? 西の神殿長が賜ったという神託は別のことを意味するのではありませんか?」
 尚も続く貴族からの反論に、殿下が大きな声を出した。
「黙れ、黙れ! ソフィアが正しい聖女だということは間違いない。そのみすぼらしい女は聖女に選ばれたのをいいことに、身の程もわきまえず皇太子妃、のちの王妃になろうとしたよく深い女だ」
 ええ? そんな馬鹿な。私は自分から聖女になりたいとも王妃になりたいとも思ったことなどないし、むしろなりたくないんですけど。皇太子となんて結婚したくないなんて言ったら不敬かと思って言えなかっただけで……。
「私利私欲にまみれるなど、それだけでも聖女としてふさわしくない。そればかりか、先ほどの祈りの言葉を聞いただろう? 祈りすらろくにできないのだ。巫女ですらできることが」
 思わず下を向いて唇をかむ。
 祈りは毎日きちんとしていた。
 言葉を口にせずとも、自分の言葉で最大限の感謝の気持ちや、国の安寧を願って祈っていた。
 だけれど。祈りの言葉をうまくつむげないのも事実だ。もっと練習しておけばよかった。
「レオンが間違っていたというのか? しかし……西の神殿長が受けた神託は違う意味である可能性も……もし、違う意味であったとしたらそれは……」
 陛下が渋い顔をする。
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