時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第十九話 眠る方法

カレンは、眠る方法を話し出した。

「自分の魔力で体を包み、体だけ弱体化させれば良いだろう」
「リディアは魔法は使えませんよ」
「お主、魔法の使えん者とどうやって戻ったのだ?」

それは、俺が聞きたい。
時間魔法の使い方なんぞ知らん。
カレンだって、使い方はわからん、と言って使い方を教えてくれなかっただろうが。

「大体どうやって副作用がリディアに移ったのかのぅ。……呪いか何か、魔法耐性が弱まっていたのか?」

カレンは、うーん、と指を立て考えていた。

「リディアは呪いで事切れる寸前でした。もしかしたら、事切れていたかもしれませんが……」
「それだ、全くの無防備のリディアをお主が一緒に連れて来たのだ。お主は阿呆だの。一人で戻り、リディアを助ければ良かったのに」
「だから、使い方がわからんでしょうが!」

カレンはいつもマイペースというか、こういうやつだ。

「お主の魔法の副作用なら、お主の魔力を使えば良いだろう。魔法が使えんぐらいの魔力なら弱体化させる必要もないだろう。寝る時は一緒に寝れば良いだけではないのか」

なるほど、寝る時に俺の魔力と繋がっていればいいのか。
やっと、役に立つことが聞けた。

「ちょっと待って下さい!他には!? 他にはないんですか!? 偉大な魔女様!」

カレンと二人で納得したところでリディアが必死に叫んだ。

「お主、さっきはお化け呼ばわりしたくせに都合が良いの」
「しっ、失礼しました。でも、他に方法があるのではっ?」
「ない。大体、こやつの魔法で戻ったのだ。必要なのは、オズの魔力だ。オズの魔力を受けるか、ブラッドフォードの血が濃い者の魔力が必要だ」
「それは、どっちにしてもオズワルド様のことですよね?」
「そうなるな」

嫌なのか? と聞くと、リディアは、顔を赤くし下を向いた。

「い、一緒に寝るなんてっ……、何かあったらどうするんです!」
「何が問題だ? お主ら、恋仲だろう」

カレンはニコニコと意地悪そうに言った。

「二人で騙してませんか?」
「カレンは魔女だから意地悪だが、俺は違うぞ」
「誰が意地悪だ。信用してないなら今すぐ試せば良い。丁度抱き合っておるではないか」

カレンに言われ、リディアを見ると、リディアも俺を見た。
逃げたいのかもしれんが逃げられてはない。

「リディア、試すか?」
「……眠らせてくれるだけですよね?」
「まあ、疲れているみたいだし……」

確かに眠れてないのはつらいだろう。
体もそうだが、頭の中が休むことができなかったはずだ。
しばらくは、何もせずにいようかな、とも思っている。
嫌われては困るし、今はリディアをただ眠らせてやるのが優先だ。

リディアをそのまま、強く抱き締め、自分の体ごと魔力で包むイメージをした。
そして、リディアと二人、黒い魔力が薄い膜のようなオーラに包まれた。

俺の腕をリディアが掴んでいたが、力なく離れた。
リディアが眠ったのだ。
そのまま、倒れないように抱き上げた。

「オズ、何故一緒に連れて戻ったのだ?」
「だから、勝手に発動したんですよ!」

こいつは人の話を聞いてないのか!?

「睡眠が取れんということは辛いぞ。お前が大事に守ってやりなさい」

カレンは、リディアが眠ったとたんに真剣な顔になった。
言われなくてもわかっている。

「必ず守りますよ。大事にしてますからね」
「なら良い。また連れて来い。中々面白そうな娘だ」
「今度は脅かさないで下さいよ」
「お主は喜んでいたではないか」
「リディアは可愛いですからね」

そのまま、リディアを抱きあげたまま図書館を後にし、部屋に連れて帰った。






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