時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
第六三話 場所の中は
オズワルド様と二人で、いつも通り朝食を楽しんでいると、一通の書簡が届き、彼はお茶を飲みながら書簡を読んでいた。
「リディア、ノートン親子が逮捕されたぞ」
「……何故?」
どこをどうしてそうなった?
破産しただけじゃなく、何故逮捕に?
一体あの親子は何をしているのかしら。
しかも、城からの書簡で知るとは。
「読んでみろ。城に来いと書いてある」
書簡には、ノートン親子のことが書いてあり、城に来るようにとあった。
どうやら、オズワルド様の調書も取りたいらしい。
私を呪おうとしたことも書いてあり、私の無事も含め、私も城に来るように書いてあったのだ。
「私、無事なんですけど……行かないとダメですかね?」
「招集されているからな。俺の婚約者だから気にしてるのかもしれん」
……面倒くさい。行きたくない。
でも、行かないとオズワルド様に迷惑がかかる。
仕方なく、朝食の後すぐに出発した。
城からの招集だから、魔法でも使い早く行くのかと思いきや、いつも通りの馬車でゆっくりだった。
「あの……いつも通りのペースでいいのですか?」
「街の上は緊急時以外は飛ぶことを禁じられているし、俺は飛べんぞ。転移魔法も使えんしな」
「そうなんですけど、急ぐ気ないですよね?」
「何故俺がノートン親子の為に急がねばならんのだ。ノートン親子なら待たせればいい。緊急なら城から転移魔法を使えるやつが来るだろうし、来ないのだから、ゆっくりで構わんだろう」
「そうですか。なら、マリオンとウィルも後からでなく一緒の馬車で連れて来れば良かったですね」
窓に手を当て外を見ながらそう言うと、オズワルド様が後ろから私の手に重ねて、覆い被さってきた。
「二人でいたいのだが」
「いつも一緒にいますよ」
近いんですけど!
ドキッとするんですけど!
少しだけ後ろを振り向くとオズワルド様の顔がすぐ近くにある。
「……逃げなくなったな」
「はぁ、まぁそうですね」
意外と結構好きになってますからね。
悪巧みをしている時は少し引きましたけど、好きなのは変わりませんでしたし、アリシアから私を守ろうとしてくれた時は心を打たれた感じだった。
本当にオズワルド様と婚約して良かったと思いましたよ。
「……オズワルド様、近いです」
そう言う私に、オズワルド様は無言で唇を塞いでくる。
無言で唇を塞がれていると、また舌を入れてくる。
オズワルド様……ここは馬車の中ですよ!
こんなところで、こないだの続きをする気ですか!?
こんなところでは嫌です!
いやいや違う!場所が問題じゃない!
まだ、結婚まではダメです!
「オズワルド様っ! 待って下さい!」
「何だ?」
何だと言いながら、耳や目やとにかく顔にキスを何度もしてくる!
「こんなところでこないだの続きは嫌ですよ!」
「期待していたのか。では、期待に応えよう」
「違います!」
真っ赤な私と違いオズワルド様は笑いが我慢できなかったのかククッと笑い出した。
「馬車の中でもしたいならしてやるが、待ってやるから心配するな。お前が好きだからキスしたいだけだ」
さらっと赤面するようなことを言ってくる。
「嫌か?」
「……嫌じゃありません」
力強く抱き締められ、またキスをしてくると、待ってくれるという言葉に安心したのか、私はオズワルド様の胸板を握りしめるように服を握っていた。