時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第七十一話 エルフの扉

今日もいつも通り、オズワルド様は朝から仕事に行く。



「今日は早くの出勤なのですね」

「早く帰りたいからな」

「ふふ、帰ってくるのを待ってますね」



そして、いつも通り肩に手を回してきたオズワルド様の顔が近付いてくる。

最近は毎朝の出勤前のキスをしてくる。それに、頬を紅潮させながら受け入れている。



「後でマリオンとお茶を届けますね」

「ミントティーにしてくれ。仕事は面倒くさい」

「はい、いってらっしゃいませ」



面倒くさいというけど、オズワルド様は意外と仕事は真面目だ。

ただの女好きではなかった。



彼を見送ると、いつものようにフェリシア様とお茶をしに行くが今日はフェリシア様の部屋でと言われた。

どうやら疲れているようだ。

フェリシア様の部屋に行くと座って待っておられ、挨拶をした。



「フェリシア様、お加減はいかがですか?」

「疲れがあるだけよ。アレク様が今日は休めというから部屋になってしまったの」

「そうですか。私もすぐにお暇しますね」

「お話し相手が欲しいから、一緒にお茶をしましょう」



大丈夫かなと心配になるけど、フェリシア様に勧められ結局お茶をする事になると、今日は昔話をお互いに話した。



「まぁ、やっぱりリディアも子供の時はエルフの扉をつけたの?」

「勿論です。父が一緒に森に行くと言いましたが待ちきれず一人で行きました」



この国では、エルフの扉という小さな扉を、特に子供が楽しそうにつけたりする。

エルフの扉は妖精界に通じていると言われており、木に、特に根元辺りにつけ、妖精が出るのを子供は楽しそうに待つのだ。

遊びみたいなものだが、子供の時は本当に妖精に会えると思い、ワクワクしたものだった。



「リディアは妖精に会えた?」

「さっぱりです。父を待ちきれず一人で森に行きましたが結局迷子になって気がついたら夜でした。どこをどう歩いて来たのか真っ暗な森を一人で出てきたらしいです。そこを父が見つけましたね。凄く心配させてしまいました」

「まぁ。じゃあエルフの扉は?」

「つけたはずですが、迷子になったせいでどこにつけたかわからないままです」



ふふっとフェリシア様は笑って下さるけど何だかダルそう。



「フェリシア様、最近何か変わったことはないですか?」

「最近といわれてもね……何かあるかしら?」



フェリシア様に無理をさせられずに、いつもより早く失礼することにすると、マリオンがオズワルド様の差し入れのミントティーをすでに準備してくれていた。そのまま、少し早いが持って行くことにした。



しかし、まさか呪いじゃないわよね。

王宮には呪いが外からかけられないように魔除けの魔水晶が設置されているはずだし、もし呪いだとしても私じゃわからない。

やっぱりオズワルド様に相談するべきだ。



「リディア様、オズワルド様があちらにいます」



考え込みながら歩いている私に、マリオンが教えてくれ顔を上げた。オズワルド様を見ると図面を広げて、魔水晶の設置場所を説明している。

邪魔してはいけないと思い、入り口で待っているとすぐに彼は気付いてくれ、私の元に駆け寄ってきてくれた。







< 72 / 100 >

この作品をシェア

pagetop