時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第七十二話 闇の精霊の祝福

「リディア、来たなら呼んでくれ」

「お邪魔したらいけないと思いまして。それに今来たところですよ」



オズワルド様は笑顔で私の元に駆け寄って来ると、彼にミントティーの入ったバスケットを見せた。



「お望みのミントティーです」

「向こうの木陰で飲もう。マリオン、リディアの膝掛けをくれ。一時間位したらリディアを迎えに来てくれるか」

「畏まりました」

「一人で帰れますよ」

「今は改修工事で男が多いからダメだ」



男が多かろうがどうでもいい。

オズワルド様は気にしすぎです。意外と独占欲が強いのかしらね。

マリオンはクスクスッと笑っている。過保護だなぁと少し呆れてしまう。



「リディア様、一時間位でお迎えに上がります」

「わかったわ」



オズワルド様はミントティーの入ったバスケットと膝掛けをマリオンから受け取り、私の肩を抱き寄せホールの外の木陰に連れて行ってくれると、すかさず私にひざ掛けをかけてくれる。



「もう寒いから膝掛けをしろ」

「オズワルド様……意外と甲斐甲斐しいですね。でも、この辺りはあまり寒くなりませんよ」

「王都付近はな、それでも少しは冷えてくるだろ」

「オズワルド様のお邸は寒くなりますかね。雪が降ると聞いたことがあります」

「魔水晶の鉱山の方は先に降るな。邸や町の方はもっと後に降る」



お邸は森が周りに広がっているし、雪が降れば引きこもりできそう。
ゆっくりと本が読めると思うと嬉しくなる。



「今日はフェリシア様と何の話をしたんだ?」

「エルフの扉の話です。子供の時につけたんですよ」

「リディアもエルフの扉を?」

「オズワルド様もですか?」

「子供の時にしたな」

「妖精に会えましたか?」

「妖精ではないが闇の精霊が出てきた」

「……精霊?」

「姿は色々変わるから本当の姿はわからんが、黒いスライムみたいなものが出てきた。精霊の一部だろう」



黒いスライム……。

ぷにぷにして可愛いかも。



「お話しましたか?」

「会話はどうだろうな……。だが、闇の祝福を受けたな」

「凄いですね。だから魔力が高いのですか?」

「俺の魔力は生まれつきだ。多少はかさ増しされただろうが……元々ブラッドフォードは闇の魔力が強いし」

「時間魔法は? カレン様の子孫ではないのですか?」

「カレンはブラッドフォードに嫁いできた魔女だ。時間魔法もよくわからん。カレンは刻の精霊の祝福を受けていたと思うが……」



よくわからん魔法で私は助けられましたよ。

ヒース様はアスノーム公爵家だからきっと大地の魔力が強いのね。アスノーム公爵家は王都に近いから聞いたことがある。



しかし、闇の魔力か……。

私とオズワルド様の子も闇の魔力が強い子が出来そう。



「どうした?」

「いえ、子供が出来たら魔力の強い子になるのかなと……」

「子作りをしたいのか? 一人では出来んぞ」



そう言いながらオズワルド様が迫ってくる。

私の後ろは木だからこれ以上下がれない。



「人に見られますよ……」

「気にしない」



オズワルド様は私を引き寄せてキスをしてくると、彼のキスが優しくて相談したいことがあるのを忘れそうになる。



「……オズワルド様、実は相談があったのです」

「なんだ?」



そして、キスをされながらも私はフェリシア様の話を始めた。







< 73 / 100 >

この作品をシェア

pagetop