とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】



――今日のことは、忘れない? 



くたくたに茹でられたパスタのようになったわたしを撫でながら、邑木さんが訊いた。
その指からは熱が引いていて、邑木さんと自分の温度差に恥ずかしくなった。


身を持って思い知った。

どうしてわたしがあの夜、最後までしたと思ったのか。


指と舌だけで、じゅうぶんだった。

指と舌だけで、わたしはあの(ひと)にとろかされてしまった。



――教えて。今日のことは、忘れない?



ブランケットに顔を伏せて、はい、と小さく返事した。
すると、髪を撫でる大きな手はぴたりと止まり、さっと離れた。
わたしはブランケットから顔を上げ、邑木さんの方をじっと見た。



――やっと猫が、ケージから顔を出したみたいだな。



ご機嫌そうな顔をばりばりと爪で引っ掻いてやりたくなったけれど、そんな体力はもう残されていなかった。
くたくたパスタの猫は大人しくブランケットに(くる)まった。
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