とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「しんちゃん、うるさい奴らが来た」

看板を出し終えた康くんが、数人の男の人たちを引き連れて戻ってきた。
その口ぶりからすると、おそらく康くんの友達が飲みに来たのだろう。
ぞろぞろと奥のボックス席へ進んでいく。

早くお茶を飲んで帰ろう。
康くんたちの仕事の邪魔をしたくはない、と思っていると

「もしかして君、康の従妹の由紀ちゃん……?」

一人がわたしを指差した。
美容師でもやっていそうな、細身で今どきっぽい服装に、こなれた髪型。
つまり、わたしが苦手とするタイプ。

「はあ、そうですけど」

「やっぱり! 康が言ってたとおり、きれいな子だなあ。
由紀ちゃんの話、康からよく聞いてるんだよ。生意気だけどかわいい従妹だって」

「おまっ、余計なこと言うなよ!」

康くんは顔を真っ赤にして声を荒げた。

なんだ。康くん、かわいいところあるな。
ケツの穴がちっちえなんて思って悪かったかもしれない。

「ははっ。なんか康に少し似てる」

男はそう言いながらわたしの隣にすとんと座った。
まるでそうすることが当たり前かのように。
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