とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「違うよ。もる子ちゃんから、もうすぐ着くって連絡があったから」

「はいはいはい」

「本当だよ」

「はいはいはい」

「本当だってば」

「まあ、お前はもる子大好きだもんな」

康くんの大学生時代の友人、もる子ちゃんはわたしの大好きな人。

はじめて会ったのは、康くんが初代彼氏と別れて落ち込んでいたとき。
アパートにこもり、塞ぎ込んでいる康くんを訪ねると、仁王立ちのもる子ちゃんがいた。

当時、まだ高校生だったわたしには大学生のもる子ちゃんは、はじめて会う大人の女の人だった。
いまとなってしまえば大学生の女の子なんてまだ幼い女の子だけれど、あの頃のわたしには小柄で幼い顔立ちのもる子ちゃんでさえ、じゅうぶん大人に見えた。


――迎えに来るから、明日は大学に行くよ。
拒否するなら、あんたもビニール袋に突っ込むからね。


もる子ちゃんはサバサバを通り越したバサバサした口調で言い、康くんの尻を蹴飛ばした。

大人の女の人でもこういうことするのか。
わたしは呆気にとられた。
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