とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
康くんを励まし、掃除をし、差し入れまでするもる子ちゃん。

もしかしたらもる子ちゃんは、叶うことのない恋心を康くんに抱いているのではないか。
そう考えることもあった。

だけどもる子ちゃんは、康みたいな打たれ弱い男より、熊っぽくて頼りになる男がいい。康に恋とかありえない、と断言した。

バーの開店パーティーで波多野さんとはじめて顔を合わせたもる子ちゃんは、康くんにずるいずるい、と詰め寄った。


あれからもう二年。久しぶりにもる子ちゃんと会える。
いままでは休みが合わなくて、なかなかもる子ちゃんに会えなかったけれど、いまはこうして時間だけはある。
いい加減、その時間を転職活動に回さなくては、と思いはするけれど。

わたしはまだ、「どうして前職を辞めたんですか」の問いにうまく答えられる自信もなければ、自分が社会の一員として機能する自信もなかった。


まだ、もう少しだけ。

もう少しだけ、ぬるま湯の中でたゆたっていたい。
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