とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
抜けるような青空を背景に、満面の笑みでブーケを抱えるウェディングドレス姿のモデル。
二人の一生の思い出ウェディングだの、白い砂浜リゾート婚だの、胸をときめかせる言葉がところ狭しと詰め込まれた表紙。


あれは、願掛けのようなものだった。

手元にそれがあれば、そういう未来を引き寄せるんじゃないか、と。


いつか、ひーくんとそうなったらいい――なんて、淡い想いを柄にもなく抱いていた。
泡沫(うたかた)の夢だったけれど。

いや、海の藻屑(もくず)となって消えた妄想、の方が正しいかもしれない。

泡沫なんて、そんなきれいなものではなかった。
ひーくんとの最後は。

「由紀ちゃん、グラス(から)だよ。次、どうする?
あ、康。あたしに同じやつ、もう一杯ちょうだい」

「やっぱり、もる子ちゃんわたしよりも強いよね」

「うち、両親そろって大酒飲みだから。サラブレッドなんだよ」

ぐいぐいと飲み干していく、もる子ちゃん。
わたしのピッチもいつもより上がる。
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