とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
『明日の夜、9時くらいにそっちに行っていいかな。
旨いおでんつくろう(つくったことないけど、どうにかなるだろう)』


わたしもおでんはつくったことはないけれど、つくり方なんて調べればすぐにわかるだろうし、おでんなら後片付けも楽そうだ。

わかりました、と返事を打ちながら、母がおでんをつくるときは朝から仕込んでいたことを思い出した。
おでんはつくっておくので、材料は買ってこないで大丈夫です、とメッセージを追記する。

邑木さんはすぐに『ありがとう。楽しみにしてる。』と返信をくれた。
めずらしくスタンプまで押されている。

にこりと笑う黒猫のスタンプ。
この(ひと)にスタンプは似合わないな、と笑みがこぼれてしまう。


おでんだけじゃなくて、なにか副菜もつくっておこうか。
この前、酢の物が好きだと言っていた。疲れがとれる感じがいいのだと。

9時ということは、きっと腹ぺこでやってくるだろう。
あの(ひと)はおでんはおかずになる派だろうか、ならない派だろうか。
白米より、炊き込みご飯なんかの方がいいかもしれない。

ああ、そうだ。からしを買い忘れないようにしよう。
からし、からし、からし……。
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