とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「由紀ちゃん、彼氏からなんか連絡きたんでしょ」

トイレから戻ってきたもる子ちゃんがからかった。
わたしはスマートフォンをカウンターに伏せ、ビールで笑みを流し込んだ。
ゆるんでしまった口元を、苦味でぐっと引き締める。

「よかった。ひーくんと別れたのは残念だったけど、安心した」

「安心?」

「ふふ。まあ、乾杯しよう、乾杯」

「うん?」

「由紀ちゃんにも、あたしにも、かんぱーい」

グラスを交わすと、琥珀色のビールからまっすぐに泡が立ち昇った。

それはやけに色濃く、瞼の裏にじりりとやきついた。
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