とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
薄茶色に色づいた玉子や大根が、ふつふつと鍋の中で揺れる。
はじめて下処理した牛すじはほろほろとやわらかく、やれば出来るものなんだな、と自画自賛した。

今年はじめてのおでん。
朝から仕込んでよかった。やさしい出汁の香りに包まれる。

酢の物もいい塩梅になり、箸休めにちょうどいい。
鶏肉としめじの炊き込みご飯は少し味が薄かったけれど、濃いよりはいいだろう。
足すことは出来ても引くことは出来ない。

それに邑木さんは減塩した方がいいと思う。
お醤油もソースも、いつも豪快にドバッと出す。

サクサクした衣が売りだというデパ地下のメンチカツをソースの沼にダイブさせたときは、微かな殺意がわいた。
わたしが調理したわけでも、わたしが買ってきたわけでもないけれど。

そういえば少し前に、もうすぐ健康診断だとぼやいていた。
今から足掻いたところで数値が大きく変わったりはしないだろうけれど、それでもなにもしないよりはいい。

わたしもそろそろ健康診断を受ける時期だ。

いままでは会社を通して受けてきたけれど、今年は自分でどこかに申し込まなくてはいけない。
どのくらいの規模の病院へ行くべきだろう。いくらかかるだろう。

こういう、ふとしたときに会社を辞めたということを実感する。
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