とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
怯むわたしに近寄った男が、にいと笑う。
アリスに出てくるチェシャ猫のそれとよく似た笑顔。
「あは。すごい美人だ」
うっすらと、胃に不快感を覚える。
やったね兄さんと言いながら、男は邑木さんの方へ向き直った。
この男に弟なんていたのか。
邑木さんとわたしが、いかにそういった会話をしていないかを思い知った。
「兄さん、トイレどこ。ずっと我慢してたから、そろそろやばい。
玄関入ってすぐのとこで合ってる?」
まるで小学生のような口ぶりで言った弟は、そのまま軽い足取りでリビングを出ていった。
残された邑木さんがきまり悪そうに眉を寄せる。
「ごめん。スマホに何度か連絡したんだけど、繋がらなくて」
「あ、マナーモードにしてました」
「ああ、だからか」
「あの……どういう、ことなんですか」
さっきの様子からすると、弟はわたしがここにいることを知っているように見えた。
いったいどこまで邑木さんとわたしの関係を知っているのだろう。
それに、どうしてここへ?
邑木さんがここへ人を招くことは一度もなかった。
アリスに出てくるチェシャ猫のそれとよく似た笑顔。
「あは。すごい美人だ」
うっすらと、胃に不快感を覚える。
やったね兄さんと言いながら、男は邑木さんの方へ向き直った。
この男に弟なんていたのか。
邑木さんとわたしが、いかにそういった会話をしていないかを思い知った。
「兄さん、トイレどこ。ずっと我慢してたから、そろそろやばい。
玄関入ってすぐのとこで合ってる?」
まるで小学生のような口ぶりで言った弟は、そのまま軽い足取りでリビングを出ていった。
残された邑木さんがきまり悪そうに眉を寄せる。
「ごめん。スマホに何度か連絡したんだけど、繋がらなくて」
「あ、マナーモードにしてました」
「ああ、だからか」
「あの……どういう、ことなんですか」
さっきの様子からすると、弟はわたしがここにいることを知っているように見えた。
いったいどこまで邑木さんとわたしの関係を知っているのだろう。
それに、どうしてここへ?
邑木さんがここへ人を招くことは一度もなかった。