とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「いや、なにが普通で、なにがめずらしいかなんて、わからないから」

「なんなんですか、いったい」

わたしは急いた。
前置きはいいから、早く答えを知りたい。

「見てれば満足するんだ。基本的に」

「見てれば満足?」

「最後までしなくても、気持ちよさそうな顔を見れば俺は満たされる。
だからこの前も最後まではしなかったし」

「……最後まで、してないんですか」

眉間を開き、わたしは身を乗り出した。
邑木さんの大きな瞳に少しだけ近づく。

「覚えてなかったんだな」

「いえ、覚えてないわけじゃないんですけど……なんか、いろいろ曖昧で」

「君、ぐったりして寝てたもんな」

「本当に、最後までしてないんですか」

「してないよ」

「嘘じゃないですよね? 腰とか、その……なんか、違和感あったんですけど」

「その理由、聞きたい? 俺はいいけど、君は聞きたくないんじゃないかな」



次は由紀ちゃんに忘れられないように、がんばる。



そう言って、邑木さんは帰った。
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