とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「いいなあ。あの男のマンションってことは、きっといいところだよなあ。
俺、遊びに行っていい? いつならいい?」
「え、待って。なにその反応」
目を輝かせる康くんに、わたしの方が引き気味になる。
「いいじゃん、いいじゃん。カードまでもらって。いやあ、いい彼氏じゃん」
「わたしはお金を払いたいの。養ってもらいたいわけじゃないの。
なのに邑木さん、受け取ってくれなくて」
あれから十日。
その間に邑木さんはマンションに三回ほどやって来た。
――きれいに部屋を使ってくれてるな。ありがとう。
困ってることはない?
ああ、マニキュア変えたんだ。
秋らしくて、いい色。
由紀ちゃんの肌に映えてる。
邑木さんはわたしを褒めるばかりで、差し出した封筒を受け取ってはくれなかった。
いいから、いいから、と笑顔でやわらかく、だけど強引に受け流されてしまう。
そこでわたしはハンガーにかかったスーツのジャケットに、こっそりと封筒を忍ばせた。
よかった、よかった。これでお金を返せた。借りはない。
そう思っていたのに、邑木さんが帰ったあとのキッチンのカウンターには、ジャケットに入れたはずの封筒が置かれていた。
俺、遊びに行っていい? いつならいい?」
「え、待って。なにその反応」
目を輝かせる康くんに、わたしの方が引き気味になる。
「いいじゃん、いいじゃん。カードまでもらって。いやあ、いい彼氏じゃん」
「わたしはお金を払いたいの。養ってもらいたいわけじゃないの。
なのに邑木さん、受け取ってくれなくて」
あれから十日。
その間に邑木さんはマンションに三回ほどやって来た。
――きれいに部屋を使ってくれてるな。ありがとう。
困ってることはない?
ああ、マニキュア変えたんだ。
秋らしくて、いい色。
由紀ちゃんの肌に映えてる。
邑木さんはわたしを褒めるばかりで、差し出した封筒を受け取ってはくれなかった。
いいから、いいから、と笑顔でやわらかく、だけど強引に受け流されてしまう。
そこでわたしはハンガーにかかったスーツのジャケットに、こっそりと封筒を忍ばせた。
よかった、よかった。これでお金を返せた。借りはない。
そう思っていたのに、邑木さんが帰ったあとのキッチンのカウンターには、ジャケットに入れたはずの封筒が置かれていた。