とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
康くんは波多野さんと出会うまで、じつに男運がなかった。

浮気男。DV予備軍男。パチンカス男。
ほかにもアル中予備軍男だとかがいた気がするけれど、忘れてしまった。

わたしは五歳ほど離れた康くんの恋愛遍歴を、ずっと見聞きしていた。
そうすることで学んだ気になっていた。

こういう男の人には気をつけた方がいいだとか、こういうときの男はたいてい嘘をついているだとか、そういうことを。

けれど知識は知識で、それは一部の例でしかなくて。
そんなことで知った気になるのは大間違いだった。

実際には、わたしはなにもわかってなんていなかった。

「叔母さんには友達んちにしばらく住むって言ったんだっけ?」

「うん」

「あの叔母さんがよく許したな」

「無理やりだよ。半分、飛び出したみたいな感じ。
もし、康くんがうちの家族からなにか訊かれても邑木さんの話はしないでね。ぜったいに」

「訊いてこないと思うけど。俺が勘当されてからは由紀んちの家族と俺、接する機会もないし」

「もし、だってば。もし訊かれても言わないでね」

「はいはいはい」

「約束破っちゃ駄目だからね」

「はいはいはい」
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