とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
はいを三回言う癖のある康くんに、わたしは空になったガラスの器を差し出し、おかわりをねだる。
何回目だよ。そう呆れながらも康くんはラムレーズンアイスをよそってくれた。

ここのラムレーズンアイスはちゃんとラム酒の甘さと苦みを感じられる、嘘偽りのないラムレーズンアイスだと思う。
レーズンを噛み締めれば、口の中はじゅわりとラム酒で満たされる。

「で、あっちはどうなわけ」

「あっち?」

「あっち」

「どっち?」

「あっち」

にやにやと下衆な笑みを浮かべられた。
せっかくのラムレーズンアイスが一気に台無しになる。

「これだけアイス食わせてやったんだぞ。言わないなら、今まで食べたアイス返せ」

「康くん、自分も三代目彼氏と同じようなこと言ってない?」

「いいじゃん、ちょっと話すくらい。由紀はここでは永久フリーなんだから」

それは確かにそうだった。
康くんも波多野さんも、いいよ、いいよと言ってくれて、わたしはここでお金を払ったことは一度もない。


そう、「ない」のだ。


「ないよ」

「え?」

「してないよ」

「ええ?」

「してないよ、邑木さんと」
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