とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「まさか邑木さんイン……」

「ちょっと! そういうこと言わないでよっ」

「由紀の最終更新履歴は、ひーくんのままか。なんだ」

つまらなさそうに言われ、わたしは反発するように唇を尖らせた。
康くんといると、わたしの精神年齢はぐっと下がる。

「俺の脳内では、ひーくんは俺の歴代の彼氏よりも極悪人ってことになってんの。
だから、なんだ、なわけ。早く別の、もっといい男で上書きしちゃえよ」

「更新履歴とか上書きとか、変なこと言わないでってば」

ひーくんとの結末について、わたしは康くんに詳しく話していない。
話したくない。

話したら、わたしはまた思い出すことになる。


引き裂かれるような胸の痛みを。

どうしようもない怒りと絶望を。


別れ話のときにテーブルの上に刃物がなくてよかった。
あったらなにをしていたかわからない。
白いワンピースを自ら赤く染め、目を覚ましたわたしはベッドの上にいたかもしれない。
無数の管に繋がれて。
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