とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「それより、今井さんから佐倉さんが辞めたって聞いて、びっくりしちゃったあ。
また同期が減っちゃった。なんで? なんで辞めちゃったの?
やっぱり、あれかな。メンタル、やられちゃった?」
無邪気なのか、無神経なのか。
いや、わざとだ。
ご丁寧に心配そうな顔をつくって大声で訊く松井由香利も、たいして仲がよかったわけでもないのに、わざわざわたしのことを別店舗で接点のない松井由香利に話す今井さんも、ちらちらこちらを見る手を繋いだカップルも、みんな爆破しろ。
「わたし、ここだから」
もう二度と会うことはないだろうし、そうであって欲しい松井由香利に背を向け、わたしは電車を降りた。
発車ベルが鳴り、さっきまで心地よかった電車の音がただの騒音に変わり、軽くフラッシュバックする。
前から後ろから、徐々に襲ってくる不安。
汗でぴたりと貼りつく服が気持ち悪い。
首の周りをぐるりと囲うネックレスのチェーンを引きちぎってしまいたい。
どうしよう。
薬をのもうか、やめておこうか。
もしものためにバッグには一錠入っている。
自販機で水を買い、ベンチに座って半分ほど飲んだ。
深呼吸を繰り返しながら逡巡する。
また同期が減っちゃった。なんで? なんで辞めちゃったの?
やっぱり、あれかな。メンタル、やられちゃった?」
無邪気なのか、無神経なのか。
いや、わざとだ。
ご丁寧に心配そうな顔をつくって大声で訊く松井由香利も、たいして仲がよかったわけでもないのに、わざわざわたしのことを別店舗で接点のない松井由香利に話す今井さんも、ちらちらこちらを見る手を繋いだカップルも、みんな爆破しろ。
「わたし、ここだから」
もう二度と会うことはないだろうし、そうであって欲しい松井由香利に背を向け、わたしは電車を降りた。
発車ベルが鳴り、さっきまで心地よかった電車の音がただの騒音に変わり、軽くフラッシュバックする。
前から後ろから、徐々に襲ってくる不安。
汗でぴたりと貼りつく服が気持ち悪い。
首の周りをぐるりと囲うネックレスのチェーンを引きちぎってしまいたい。
どうしよう。
薬をのもうか、やめておこうか。
もしものためにバッグには一錠入っている。
自販機で水を買い、ベンチに座って半分ほど飲んだ。
深呼吸を繰り返しながら逡巡する。