とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「運転、大丈夫?」

「運転?」

「うん。俺の運転、酔ったりしないかと思って」

「あまり、人を車に乗せないんですか?」

「そういう意味じゃなくて、運転にも相性があるから。
俺の運転が由紀ちゃんに合ってるかどうかの確認」

邑木さんの運転は安定していた。
荒ぶるわけでもなければ、ブレーキを強く踏むわけでもないので、気を張らずにシートに身を任せていられる。

ひーくんの運転は、とてもゆったりとしていた。

ゆったり、というより、のろのろ、だったかもしれない。
心配症のひーくんらしい運転だった。

もう少しスピードを上げてもいいんじゃないかと言っても、いやいやいや、と首を振る。
スピード狂よりはいいだろうけれど、後続車からクラクションを何度も鳴らされたときは、変な揉め事に発展しないかはらはらした。

だけど、そんな心配症のひーくんはしくじった。

心配症のくせに、しくじりやがった。

「あの、それよりあれはなんだったんですか」

「あれ?」

「自分の婚約者に、私の買い物を頼んだりして」
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