とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
邑木さんは平然と言い、真っ直ぐ前だけを見てハンドルを握る。
指輪じゃないとか高価じゃないとか、この(ひと)の物差しだけで測られている。

金持ちに飼われている珍獣は、大人しく従うしかないのだろうか。

「受け取れません、こんなもの」

小さい声だった。
それでもそこには自分なりのプライドだとか、失ってはいけないものだとかを注ぎ込んだ。

わたしには、よろこんで喉を鳴らして受け取ることは出来ない。

「こんなものって、まだ開けてもいないのに」

「見たって気持ちは変わりません。受け取れません」

「どうして」

「どうしてって……」

この(ひと)にはわたしの言っていることが、考えていることが、どこまで伝わらないのだろう。
憤りを覚えると同時に、ああ。やっぱり、と思う。

やっぱりわたしは男という生き物とうまくやっていけない。

たった二人くらいの経験でなに言ってるんだガキが、と康くんには笑い飛ばされそうだけれど、ガキだって経験をしたらそれが基準になって考えてしまう。
ガキにだって、ガキの経験がある。
< 71 / 187 >

この作品をシェア

pagetop