とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「ちょっとでかい仕事をがんばったお祝いってことで、受け取ってよ」

「お祝いって言葉の意味、知ってますか」

「知ってるよ」

「お祝いだって言うなら、それはわたしが邑木さんに贈るものであって」

「君がよろこんでくれることが俺にとってはうれしいことだから」

「だから、そういうフェミニスト気取りやめてください。
だいたいお寿司だって、わたしなんかじゃなくて玲子さんと食べに行ったらよかったじゃないですか。
すごく素敵な(ひと)じゃないですか」

「玲子とはそうじゃない。人に決められた、そういう関係だから」

「……とにかく、受け取れません。こんなもの分不相応です」

車内がしんと静まり返った。
分不相応か、と邑木さんがわずかな声で呟き、ブレーキを踏んだ。
鼻梁の通った横顔を、信号と街灯が橙色に照らす。

「どうして君は、自分をそう低く見積もるの」

今度ははっきりと告げられた。
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