好きになっちゃ、だめでしたか?
「あ、あのさ。神山君。今ちょっといい?」
朝。いつもよりも早めに学校に着くと、神山君もちょうど登校してきた。
鞄を肩に掛けたまま、靴を履き替えて教室には向かわずにこの前の人気の少ない校舎へと向かう。
心臓はあり得ないほどに早く動いている。
本当に、この返事で合っているのかな。
本当に、神山君の彼女になるっていう選択を取ってもいいのかな。
後ろを歩いている神山君。
背中が熱い。
意を決して、立ち止まった。
「あの、あのね。返事なんだけど」
神山君は、一度大きく目を見開いて喉を鳴らし、姿勢を正した。
わたしも思わず彼にならって姿勢を正す。
「その、本当に申し訳なくて、子どもの頃の記憶が全然ないんだけど。その、それでもいいなら、わたし神山君の彼女になりたいなって」
神山君の目を見る勇気がなくて、ぎゅっと瞼を閉じる。
だけどその瞬間、暖かい手が自分の手を包む。
そっと目を開けると、神山君がわたしの手を握っている。
「本当に?」
「う、うん」
「よかった。この前の上野さんの反応からてっきりフラれるとばかり」
「あ、いや、あのごめんね。それに、思い出せないのは事実で。でも、こんなわたしでよければ」
「うん、いいよ。今の上野さんのことも好きになりたいから」
神山君は笑った。
わたしもつられて、手を握られたまま神山君に笑顔を向けた。
朝。いつもよりも早めに学校に着くと、神山君もちょうど登校してきた。
鞄を肩に掛けたまま、靴を履き替えて教室には向かわずにこの前の人気の少ない校舎へと向かう。
心臓はあり得ないほどに早く動いている。
本当に、この返事で合っているのかな。
本当に、神山君の彼女になるっていう選択を取ってもいいのかな。
後ろを歩いている神山君。
背中が熱い。
意を決して、立ち止まった。
「あの、あのね。返事なんだけど」
神山君は、一度大きく目を見開いて喉を鳴らし、姿勢を正した。
わたしも思わず彼にならって姿勢を正す。
「その、本当に申し訳なくて、子どもの頃の記憶が全然ないんだけど。その、それでもいいなら、わたし神山君の彼女になりたいなって」
神山君の目を見る勇気がなくて、ぎゅっと瞼を閉じる。
だけどその瞬間、暖かい手が自分の手を包む。
そっと目を開けると、神山君がわたしの手を握っている。
「本当に?」
「う、うん」
「よかった。この前の上野さんの反応からてっきりフラれるとばかり」
「あ、いや、あのごめんね。それに、思い出せないのは事実で。でも、こんなわたしでよければ」
「うん、いいよ。今の上野さんのことも好きになりたいから」
神山君は笑った。
わたしもつられて、手を握られたまま神山君に笑顔を向けた。