好きになっちゃ、だめでしたか?

昔の思い出話。

「ねえ、るい。入学して一週間で告白されたって本当? 流石るいだよね」

「そんなことないよ。少しだけ見た目が目立つだけで」

「でも、やっぱり断ったの?」

「……うん。やっぱり忘れられなくて。春樹君のこと」

 高校に入学して、一週間が過ぎた。

 理系クラスは噂通り勉強に関しては厳しい。

 だけど、1クラスしかないせいかクラスの雰囲気は殺伐としたものではなく、クラスメイトそれぞれの個性を尊重しているかのような雰囲気で、心地よかった。

 告白して来てくれた同じクラスの男子も、フラれたからと言って態度は変わらない。

 彼も悪くはなかった。

 わたしに告白してくれた人、皆いい人たちだった。

 でも、忘れられない人がいる。

 幼い頃、何度か近所の公園で遊んでもらった『春樹君』。
 
 見た目のせいでからかわれることが多くて、いつも帽子を被っていたわたしに、なにも気にせずに話し掛けてくれた男の子。

 その子の笑顔に救われた。

 白い肌、くりんくりんとした丸い目。

 でも、引っ越してしまった。

 大好きだったのに。

 せめて、大好きだよって、伝えておけばよかったと後悔している。

「でもさ、その会えるか分からない人よりも、もっと周りの人に目向けたらいいんじゃない? 初恋って確かに思い出深いものがあるけど、その春樹君を待ってたらいつまで経っても恋愛できないよ」

「待ってるってわけじゃないんだけど……。でも、そうだよね」

 めいの言う通りだと思う。

 いつまでも会えない、しかも幼い彼に片思いをしているなんてきっと馬鹿げていること。
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