好きになっちゃ、だめでしたか?
 教室に着くと、すでに多くの人で賑わっていた。

 黒板に張られている座席表。

 教室に来た人たちはそれを見て自分の席を確認している。

「留衣はどこー?」

「うんとね、あ、ここ。隣は男子みたい」

「あ、わたしの斜め後ろじゃない?」

 ちょうど教室の真ん中あたりの席。

 どうせなら窓側がよかったなあ、なんて黒板から教室内に目を向けると、1人の男子学生と目が合う。

 しかも、顔がすっごく整っている人。

 その人はわたしのことをじっと見ていて、目を逸らさない。

「留衣、トイレ行かない? 入学式だし、トイレいけないでしょ?」

「あ、うん」

 一度一華に目を向けて、再び彼のことを見るとまた目が合った。

 だからすぐに逸らした。

 なにか、わたし変なことでも言ってたかな、もしかしてさっき廊下であの人の足踏んじゃったとか?
 
 整った顔の無表情は美しいというよりも少し怖い。

 荷物を置いて廊下に出ると、一華は「ねえねえ」と肩に手を置く。

「1人さ、めっちゃイケメンいたよね? 2列目の1番前に座ってた人」

 ぱっと頭に浮かんだのはさっきの人。

 2列目の、1番前。

 それは確かにあの人の席。

「あ、うん、確かに。わたしもちらっと見たんだけど、すっごい顔整ってたよね」

「うんうん、いいなあ、彼と友達になりたい」

 一華は胸の前で手を組んで目をこれ以上ないくらいに輝かせていた。
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