好きになっちゃ、だめでしたか?
入学式は無事に終わり、今日は授業もなく自己紹介で午前中が終わった。
午後はなにもなく、あとは帰るだけ。
一華と同じ電車に乗る。
昼の電車は空いている。
「ねえ、このままどっかでお昼食べて行かない?」
一華の提案に、頭を縦に振った。
「ああ、うん、いいかも」
一華は早速連絡先を交換したクラスの人にメッセージを送っていた。
「ていうか、あのイケメン。神山春樹って言うんだね。春樹、かあ。たしかに春っぽいかも。でも、あの肌の白さ考えたら春樹より冬樹?」
「そ、そうかもね」
自己紹介のときのことを思い出す。
1人1人、その場で立って皆のほうに顔を向けて名前と適当に好きなものの紹介をしていった。
彼の番が来たとき、1番前に座っている彼はくるりと身体の方向を変えてクラスメートを見た。
クラスメートの女子たちが少しざわついたのを覚えている。
なんとなく、彼の顔を見るのが怖くて視線を下に向けていた。
でも、ふっと顔を上げて彼の顔を見ると。
ばちり。
やっぱり目が合った。
強い視線。まるで、わたしだけに自己紹介をしているように感じる。