好きになっちゃ、だめでしたか?
 次の日から授業が始まり、中学の時とはペースの速さにすでに脱線しそうになる。

 唯一の安堵の時間はお昼休みの時間。

 一華は可愛らしい小さなお弁当に、色とりどりの野菜が入れられた昼食。

 わたしは、お母さんが手抜きで作った茶色の多いお弁当。

「うう、ちょっと教科書捲るペース速いよね? 宿題もかなり多いし」

「でも、理系クラスはもっとやばいって聞くよ? ほら、校舎も違うし。ほとんど普通科とは会わないしね。特別って感じで。てか、留衣って理系なのに希望出さなかったの?」

「確かに理系が得意だけど、文系の学問にも興味あるから。高校に入学してから決めようと思ったの」

「そっか。うん、よかった。そのおかげで一緒のクラスになれたしね」

 うん、と言おうと前を向いたとき、また目が合う。

 神山くん。

 わたしは本当に、彼の癪に障るようなことを無意識のうちにしてしまったんじゃないだろうか。

 だけど、思い出しても記憶の中に彼はいなくて。

 目が合う度に不安は雪のように積もっていくばかり。

「留衣?」

「あ、うん、なんでも」

 なにかあるなら直接話してくれればいいのに、と思いながらミニトマトをぷちっと口の中で潰した。
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