君と二人でいられること。
「春香‼」

大好きな声が聞えたような気がして、それでもまだ何も考えられずにいると、シトラスの香りに包まれた。

「__な、つやくん?」

泣きはらした後のかすれた声で大好きな彼の名前を呼んでみる。

すると、腕を引っ張られて彼の顔が目の前に来る。その顔には、いつものような余裕はなく、とても焦っているように見えた。

「お前、何しようとしてたんだよ」

怒っているようで、悲しそうで。そんな彼の様子に、私は意識を取り戻してあたりを見渡した。

そこは、先ほどまでいたドアのすぐそばではなく、屋上のフェンスの一歩手前だった。

「え、」

怖かった。

私は、無意識のうちに楽になろうとしてたんだ。
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