君と二人でいられること。
「私たちって、カップルって言えるのかな?」

いつも通り部屋でご飯を食べているときに、ふと聞いてみた。

悩んで悩んでようやく絞り出した問いに返ってきた答えは、

「わかんね」

その一言だけだった。

それだけ言って如月くんはベットへ行ってしまった。

こんなの、前と変わらない。

「私は、ひとりぼっちから抜け出せないのかな?」

自然と涙があふれ、如月くんに見つからないよう静かに外へ出ようとしたとき、ふわりとシトラスの香りに包まれた。

「え?」

突然のことに戸惑いを隠せずにいると、頭の横から如月くんの声が聞えてきた。

「どこ行こうとしてんだよ」

いつもより明らかに低い声に焦ってしまい、

「ごめん。私今、めんどくさいよね」

答えている間にも涙は止まらず、こんな自分が嫌になった。

「悪い。俺の言い方が悪かった」

「違う、私がめんどくさいこと聞いたから」

「めんどくさくない。俺は、出逢ってから一度もお前をめんどくさいなんて思ったことはない」

「え、」

如月くんの言っていることがわからなかった。

必死に飲み込もうと考えていると、如月くんの方を向かされて目が合った。

「俺は、こういうの得意じゃねえからよくわかんねえけど、一個だけ。お前の飯が、俺の楽しみだ」

いつも一言も発さずに黙々と食べている如月くんの言葉が、言葉では表せないほどうれしかった。

料理をするのは好きで、つくったものをSNSにあげてはいいねを稼いでいた。私にとって、趣味であり道具だった料理。でも今、そのおかげで距離が縮まった。

「あ、ありがとう」

「おう」

「じゃあ、俺は寝るからどっか行くなよ、春香」

「え、」

今、名前呼んでくれた?

「う、うん。夏也くん」

名前を呼んだとき、彼の後ろ姿が嬉しそうに見えたのは、私の勘違いだったのかもしれない。
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