陶酔

プロローグ

「春でも夏でもつけちゃうんだよね、この香水……ねぇ聞いてる!?」

「え、あぁ」俺に話しかけてたのかこの人

生まれてこのかた大きな声を出したのは母親の腹から出てきた時に泣いたときぐらいだろうか…

小学校は最後まで余った図書委員、中学校は陽キャに無理矢理やらされた学級委員、高校では委員会決めの日に休んだが存在さえ忘れ去られた、そんな陰キャ人生の俺だ。

「小野崎くんにクイズです!この匂いは何の匂いでしょうか!」

「俺鼻炎持ちだからこの季節鼻詰まっててわかんない」

秋は花粉症で鼻が死んでる。それでも若干香ってきた甘い香り

「いや…なんか甘い香りするかも」

「キンモクセイっていうんだ!すっごいいい匂いだから秋の花なのに年中つけちゃうんだよね」

年中甘く優しく包み込む匂い…彼女は

〝金木犀の匂いがする女の子だった〟
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