双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
絶対に会ってはいけない人
再会、ふたりの過去
少し消毒液の匂いがする夜間救急診療所の待合室で、谷本葵(たにもとあおい)は、名前が呼ばれるのを待っている。
午後十時をまわっている今、患者は自分達だけだった。
右の膝の上では一歳になったばかりの息子の悠馬(ゆうま)が頭を乗せてすやすやと寝息を立てている。
もう一方の膝には散々泣いて頬に涙の跡がたくさんついたままのもう一人の息子晴馬(はるま)がくっついていた。
おでこに貼られた血の滲むガーゼが痛々しい。
「谷本さん」
名を呼ばれて葵は「はい」と答えるが、子供ふたりがくっついていてすぐには動けない。
年配の看護師がむこうから近寄ってきてくれる。そして思わずといった様子で笑みを浮かべた。
「あらあら、双子ちゃんなのね。これはママ大変だ。僕? ちょっと傷を見せてね」
そう言って晴馬のおでこのガーゼをそっとめくると、晴馬が顔を歪めて泣きそうな表情になった。葵は腕にギュッと力を込めた。
「大丈夫よ」
「血はもう止まっているようね」
傷を確認する看護師に、葵は傷ができた時の状況を説明をした。
「少し目を離した隙にテーブルの角でぶつけてしまったんです。私の不注意で……。止血はしましたけど、傷が深いので……」
病院へ連れていった方がよさそうだと判断した。
けれどすでに診察時間は過ぎていたから、自治体がやっているこの夜間救急診療所へ駆け込んだのである。
看護師が頷いた。
「ちょうど今日は外科の先生がいらしているから、診てもらいましょうね。じゃあ、もう少ししたら呼びますから、待っていてください」
「はい」
葵はホッと息を吐いた。
自身も看護師で、ある程度の怪我は見慣れているから、晴馬の傷が少し深くて縫うことになりそうだと思っていたからだ。
夜間救急診療所は、普段は別々の病院に勤務する医師が交代で診察にあたる。
当然専門ではない医師がいる場合も多いのだ。
外科の医師に診てもらえるなら安心だ。
でもそこで。
「ねーねー今日の先生、すごく素敵だった!」
「え、そうなんだ。どこの先生?」
「確か白河病院だったような……」
午後十時をまわっている今、患者は自分達だけだった。
右の膝の上では一歳になったばかりの息子の悠馬(ゆうま)が頭を乗せてすやすやと寝息を立てている。
もう一方の膝には散々泣いて頬に涙の跡がたくさんついたままのもう一人の息子晴馬(はるま)がくっついていた。
おでこに貼られた血の滲むガーゼが痛々しい。
「谷本さん」
名を呼ばれて葵は「はい」と答えるが、子供ふたりがくっついていてすぐには動けない。
年配の看護師がむこうから近寄ってきてくれる。そして思わずといった様子で笑みを浮かべた。
「あらあら、双子ちゃんなのね。これはママ大変だ。僕? ちょっと傷を見せてね」
そう言って晴馬のおでこのガーゼをそっとめくると、晴馬が顔を歪めて泣きそうな表情になった。葵は腕にギュッと力を込めた。
「大丈夫よ」
「血はもう止まっているようね」
傷を確認する看護師に、葵は傷ができた時の状況を説明をした。
「少し目を離した隙にテーブルの角でぶつけてしまったんです。私の不注意で……。止血はしましたけど、傷が深いので……」
病院へ連れていった方がよさそうだと判断した。
けれどすでに診察時間は過ぎていたから、自治体がやっているこの夜間救急診療所へ駆け込んだのである。
看護師が頷いた。
「ちょうど今日は外科の先生がいらしているから、診てもらいましょうね。じゃあ、もう少ししたら呼びますから、待っていてください」
「はい」
葵はホッと息を吐いた。
自身も看護師で、ある程度の怪我は見慣れているから、晴馬の傷が少し深くて縫うことになりそうだと思っていたからだ。
夜間救急診療所は、普段は別々の病院に勤務する医師が交代で診察にあたる。
当然専門ではない医師がいる場合も多いのだ。
外科の医師に診てもらえるなら安心だ。
でもそこで。
「ねーねー今日の先生、すごく素敵だった!」
「え、そうなんだ。どこの先生?」
「確か白河病院だったような……」