双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
美雪の方は、特に自分からは発言せず、自身の父親や大介から投げかけられる言葉に、控えめに答えていた。

食事が終わる頃には、この会食が白河病院の経営に関わるビジネス的なものではなく、プライベートの繋がりを作るためのものなのだという確信を晃介は深めていた。

そしてそれを決定づけたのは、コーヒーを飲んだ後、深雪を庭へ連れていくように父に告げられたことだった。

「せっかくだから、ゆっくりと話をしてきなさい」

騙し討ちのようなことをした父に、晃介は怒りを覚えたが、拒否をすることはできなかった。

父と自分の行き違いは、相手方には関係がない。

騒ぎ立てて、恥をかかせるわけにはいかなかった。

庭へ出てふたりきりになると、美雪はさっきよりもよく話した。

以前パーティで会ったことを晃介は覚えていなかったが、話すうちにぼんやりと思い出す。

確か、医科大の後輩に紹介されて話をしたような。

「ふふふ、あの時私先生のこと素敵だなぁって思ったんです。だから今日お会いできるのを楽しみにしていたんですよ」

少し甘ったるい話し方で、嬉々として話をする彼女に、晃介は言いようのない不快感を覚えた。

騙されたことに対する怒りが腹の中でくすぶっている。

今すぐにこの場を立ち去りたいくらいだった。
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