双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
白河病院のために有利になる縁談を探しているのは間違いない。

どの口がそんなことを言う、と答えたくなるのを呑み込んだ。

「それともまさかお前、結婚したい相手でもいるのか?」

眉を寄せてまるで咎めるように言う父に、晃介は一瞬話してしまおうかという気持ちになる。

自分には愛する人がいてすでに子供も生まれた。
彼女以外と結婚することなどありえないと。

そうすればこのうっとおしい見合い攻撃からは逃れられるだろう。

だが葵との約束が頭に浮かび思い留まる。彼女の許しがあるまではたとえ家族だとしても、誰かに言うわけにはいかない。

「相手がいるわけではありません」

素知らぬふりで答えると、大介が安堵したように息を吐いた。

「いいか? 遊ぶのは自由だ。そのくらいはかまわん。だが、結婚は別だ。それなりの相手でなくては俺は許さん」

勝手なことを言う父に、"あなたの許しなど不要だ"という言葉を晃介は飲み込んだ。

葵とのことを話せない段階で、ムキになって言い返してもあまり意味がない。

「とにかく、お断りしておいてください。私が直接断ってもいいならそうしますが、先方に失礼のないように断れる自信がありません」

怒りを込めて晃介は言う。そして今度こそ踵を返して駐車場を目指した。

むしゃくしゃとした苛立ちが胸の中で渦巻いている。父と話をした後はいつもこうだった。
< 104 / 188 >

この作品をシェア

pagetop