双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「そうだ。だから谷本さんには、優しくしてもらう権利がある! そそそれなのにこんなことをして、ただですむと思うなよ!」

無茶苦茶なことを言う。でもその言葉で晃介はだいたいの事情を把握したようだ。

白河病院でも年に一、二件はこういったトラブルが発生する。

「なるほどね」とため息をつく。

そしてさっきよりも落ち着いた声で説明をした。

「いいか、必要としている人に必要な医療を施すのが医療従事者の役割だ。それ以上の求めに応じる義務はない」

相手をヒートアップさせない方がいいと判断したようだ。

それでもきっぱりと言い切った。
「明らかに、君は行き過ぎたことをやっている。次は、警察を呼ぶ」

筋の通った言い分と警察という言葉に、男が怯んだ。

「姿を見かけたから、ちょっと話しかけただけじゃないか。お前こそなんだよ。谷本さんとどういう関係だ?」

「夫だ」

間髪入れずに晃介が答えると、男が目を剥いた。

「え……? 谷本さん独身だって言ってたのに」

「つい最近、入籍したばかりだ。だから俺には彼女を守る権利がある。病院に問い合わせたら、君の名前も住所も職場も……」

「わわわかったって、わかったよ! くそ、男がいるならそう言えってんだ!」

最後は吐き捨てるように言って男は去っていった。
< 110 / 188 >

この作品をシェア

pagetop