双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
そう言って彼はコンセントを差しスイッチを入れる。

その姿を見つめながら葵はこくりと喉を鳴らした。

「おいで、葵」

その言葉に、吸い寄せられるように腕の中に収まると、大きな手が葵の頭に移動した。うなじから差し込まれた指先が、愛おしむように何度も何度も髪を梳く。

小刻みに揺れるくせのある髪先が葵の頬をくすぐった。

鏡越しに自分を見つめる瞳には、あの獰猛な色が浮かんでいる。

葵の胸は甘い期待でいっぱいだった。風は熱くないはずなのに、呼吸が温度をあげていく。

でもスイッチを切った晃介は、それ以上葵に触れようとはしなかった。ドライヤーを置いてそっと離れる。

「今夜は、ここまでだ。これ以上触れたら君がほしくてたまらなくなる。……途中で止まれる自信がない」

そう言って出ていこうとする広い背中に、葵は考えるより先に抱きついた。

「晃介」

愛おしい人の名を呼んで、シャツ越しの彼の温もりに頬ずりをする。強くなった彼の香りに、葵の鼓動が加速した。

「葵?」

こうやって自分から彼を求めるのも、再会してからはじめてのことだった。

——今夜は止まれそうにない。

それは葵も同じだった。

二年半ぶりの彼の部屋。数えきれないほど愛を交わし、抱き合ったこの空間では冷静ではいられない。

母親でなく、過去に縛られてもいない、ただ無邪気に彼を愛したあの頃の自分に戻ってしまったようだった。

——私だって今すぐにあなたがほしい。

言えない思いを込めて彼のシャツをギュッと握ると、それで彼に思いは伝わる。

晃介が振り返り、ふわりと葵を抱き上げる。

思わず首にしがみつくと、耳もとで甘い声が囁いた。

「寝室へ行こう」
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