双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
彼はそこでまた沈黙し葵を抱く腕に力を込める。朝日をジッと見つめている。

葵は黙って彼の次の言葉を待つ。

晃介が一段低い声を出した。

「……そしたら、父へのわだかまりにもひと区切りつけそうだ」

不穏な響きを帯びた声音と、父という言葉に、葵の胸がどきりとした。

思わず聞き返してしまう。

「わだかまり……?」

「ああ。母は、腫瘍が見つかる半年前から父に頭痛を訴えていた。……それを父は真剣に取り合わなかった。『ほとんど家に帰らない俺に対するあてつけだろう』と言って、診察を勧めなかったんだ。昔から家庭を顧みない人だったけど、母は、医師としての父を尊敬していたんだ。俺がいくら病院に行くように言っても父の言葉を信じていた」

そこで晃介は言葉を切って深いため息をついた。

「……もちろん、その時に病院に行っていたとしても助かったという保証はない。見つかった時は手術不能なほど腫瘍が広がっていたという話だけれど、それがどこから広がったのかはわからないから。……だけど」

晃介が端正な顔を歪めて、やるせないといったように首を振った。

「だからこそ、父には悔いが残らないよう慎重に判断してほしかった。……俺は……俺はずっと父を恨んでいた」
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