双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
つらい部分を言い終えて、彼は葵の髪に口づける。
葵の香りを吸い込むように呼吸をして、目を閉じた。

「……だけどそれも終わりにする」

葵はゆっくりと振り返った。

「晃介がお母さまの病気を治せるようになるから?」

晃介が、目を開いて穏やかな笑みを浮かべた。

「それもあるけど……、一番の理由は君たちだ」

「……私たち?」

「そう、葵と晴馬と悠馬。……どんなに医療が進歩しても人は必ずいつかは死ぬ。それは俺も例外ではないだろう。だったら俺は限りある時間を君たちを愛することに使いたい。……昨夜君たちの寝顔を見ていて思ったんだ」

そう言う彼の表情はどこかすっきりとしていた。

「父とは永遠にわかり合えない。だけどそれにこだわるのはもう終わりだ。君たちを愛して生きていく。葵、愛してるよ」

輝く朝日に照らされた彼の瞳が綺麗だった。

愛おしい人がそばにいる、ただそれだけでどんな試練も乗り越えられる、それを知った者の瞳だった。

葵の胸が熱くなった。自分も彼と同じだと確信する。

今胸を満たしている思いが口から溢れ出した。
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