双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
『安心したまえ。言う通りにすれば円満退社という形で奨学金はチャラにしてやる。そして君の地元の病院に働き口を用意する。悪い話ではないだろう? ……だがこの件を晃介に漏らしたり私に逆らうようなら君はクビだ。奨学金も決まり通り支払ってもらう』

白河病院は、創業者一族である白河一族が経営権を握る病院で、その頂点に立つ大介には、どれほど優秀な医師であったとしても刃向かうことは許されない。

病院の方針に逆らって左遷され冷遇され、やめざるを得なくなった者も少なくはない。

なんの落ち度もない葵をクビにすることなど、彼にとっては容易いことだ。

『君は看護学校を優秀な成績で卒業したそうじゃないか。せっかくの資格を活かせる仕事を続けたいだろう?』

葵は唇を噛み、膝に置いた手をギュッと握りしめた。

まだ看護師として一人前とは言えない葵が再就職先を見つけるのは、簡単なことではない。

四百万円の借金を背負っているのに……。

『それとも、晃介に助けを求めるか? 私の息子だというだけの三十三歳の若造に。まだ理事ですらない男を信じてみるか?』

薄ら笑いを浮かべる大介の言葉に、葵はイエスと言えなかった。差し出した合意書に、黙ってサインをしたのである。

病院側は、奨学金四百万円を免除する。

ただし、速やかに退職し今後一切白河晃介とは接触しないことを条件とする。

もしこの条件に違反した場合は、四百万円を一括で返済する義務が生じる……。
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