双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵の闘い

大介からのコンタクト

白河大介から葵にコンタクトがあったのは、晃介がスウェーデンへ立ってから一週間後のことだった。

職場にて、外科部長の高梨に応接室へ呼び出されたのである。

来客があるからすぐに来てほしいという伝言を葵は不審に思った。高梨から話があるならともかく、来客には心あたりがない。

「失礼します」
 
断ってからさほど広くはない部屋に入り、中にいる人物に目を留めて、葵は凍りついた。
 
高梨と向かい合わせに座っている人物に見覚えがあるからだ。二年半前に一度会ったきりだけど間違いない、白河大介だ。

「ああ、谷本さん。久しぶりだね」
 
彼はそう言って、不自然なくらいにこやかに笑った。

「高梨君に用があって来たんだ。ついでに久しぶりに顔を見ておこうと思ってね」
 
一方でなにも知らないであろう高梨の方は、明らかに戸惑っていた。

あたりまえだ。
 
自分を転職へ追い込んだ、医療界の帝王ともいう人物と最近入職したばかりの部下、いったいどういう関係なのだと思っているのだろう。

「谷本さん、まあ座りなさい。高梨君、申し訳ないが席を外してくれないか。彼女に話があるんだ」
 
そう言う大介は親しげで、不穏な空気は微塵もない。高梨が頷いた。

「え、ええ、もちろんです」
 
そして後ろを振り返りながら部屋を後にした。
 
葵は高梨の代わりに向かいのソファに腰をおろす。
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