双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
大介の言葉に、葵はキュッと唇を噛んだ。葵自身を攻撃するのは無意味だと気がついて晃介に矛先を向けることにしたようだ。

脅しでは、ないように思えた。

この男は、自分の思い通りにならなければ、息子であっても切り捨てるだろう。

「キャリアにプラスになるようなオペからも外す」

大介がにやりと笑ってとどめだとばかりに言い放つ。

その言葉に葵は息を呑むんだ。

本当ならあまりにもひどい言葉だ。キャリアにプラスになるような症例のオペとは、すなわち難しいオペということだ。

晃介がキャリアにこだわることはないだろうが、それでも難しければ難しいオペであるほど晃介が執刀するべきだ。彼の高い技術を求めて、全国からたくさんの患者が集まっているのだから。

「……それとも、そんなことはどうでもいいか? 晃介の金さえあれば?」
 
医者とは思えないひどいやり口だ。でもその攻撃に葵の心は揺さぶられた。
 
一年半しか一緒に働けなかったけれど、その間にもたくさんの患者が晃介のオペで命を救われて元気に退院していくのを見た。彼が執刀できなければ、救える命も救えなくなるという可能性すらある。

 ……でも。

「……それは晃介に関わることですから、晃介さんに決めていただきます」
 
そう答えて葵はゆっくり言って目を閉じる。
 
もう同じ過ちは繰り返さない。
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