双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
自分と彼は同じ未来を目指している。もう心はひとつなのだから、ひとりで結論を出さない。
 
しばらくは長い重い沈黙が応接室に横たわる。先に口を開いたのは大介だった。

「……なるほど」

低い呟きに、葵は目を開いた。

「脅しには屈しないというわけか」

大介はそう言っておもむろに立ち上がる。言うべきことは言ったから帰るつもりなのだろう。葵はそれを座ったまま視線だけで追った。

ドアノブに手をかけて大介が振り返った。

「私に歯向かったこと、後悔するといい」
 
そう言い残して部屋を出ていった。

ドアが閉まると同時に、葵はホッと息を吐く。震える両手を膝の上で握りしめた。

守りたいものがある、それだけで人は強くなれるのだ。今それを実感している。
 
以前の葵なら想像もできなかったことだった。医療界の頂点に立つ人物に宣戦布告のような言葉を口にするなんて。

絶対にありえない。

でも母として愛おしい子供たちのため、愛する人との場所を守るために、負けるわけにいかなった。

晃介は、葵と双子たちのために高い壁を乗り越えてくれた。

今も、幸せな未来のためにひとつの試練に立ち向かっている。

その彼と、あの家で待っていると葵は約束をしたのだ。

その約束をなんとしても果たしたい。

自分の戦いが今始まった。

白河大介が出ていったドアを見つめて、葵はそう自覚していた。
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