双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
葵は首を横に振った。

「大丈夫、もともとはひとりでやってたんだもん。それに晃介がいない間は、母に手伝ってもらうことにしたの。保育園へ迎えに行ってアパートで待っててくれるから、私は母のアパートへ迎えにいくことになってるの」
 
こちらへ来て数カ月が経ち、体調も落ち着いた母が、手を貸してくれるようになった。保育園への迎えがちょうどいい運動になっていると言ってくれるのがありがたかった。

「だから晃介は、安心して仕事に集中して。帰りを待ってるから」
 
晃介は納得したように頷いて、あとはしばらく晴馬と悠馬と会話ならないようなやり取りをする。
 
そして《また電話する》と告げて通話を切った。
 
葵はホッと息を吐く。

『変わりない?』という彼からの問いかけに、葵は『大丈夫』と答えた。
 
半分は本当で半分は嘘だった。
 
白河大介にふたりのことを知られてしまってまた脅しをかけられている。

"変わりない"というわけではないだろう。
 
でも大丈夫というのは本当だ。
 
なにがあってももう逃げださない。ここで子供たちと彼の帰りを待つ。
 
大介がコンタクトを取ってきたことについては、晃介には帰ってきてから話すと決めている。
 
彼が参加すると聞いてから、葵はスウェーデンで新しく始まった脳腫瘍の治療法について自分なりに調べた。
 
脳外科の分野では新しい試みで、世界中の脳外科医が注目しているプロジェクトだという。
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