双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
参加したいと手を挙げる医者はたくさんいたけれど、日本人として参加が許されたのは晃介のみ。
 
プロジェクトが成功し、彼が日本に技術を持ち帰ることができれば、日本の脳外科の分野は一歩進むだろう。
 
それこそ母の死を彼が乗り越えるために必要なことなのだと葵は思った。
 
今、不用意に日本でのことを話して、彼の心を乱すようなことはしたくなかった。
 
通話が終わり父親が映らなくなった画面に残念そうにぶーっとして、子供たちは解散する。そして和室に設置されたジャングルジムへ走っていった。
 
ジャングルジムはもともと葵の家にあったものを持ってきたのだが、晃介がブランコとボールプールを買い足してバージョンアップしてくれた。

子供たちはこのスペースが大のお気に入りで、夕食から風呂までの時間はたいていそこで遊んでいる。

その間、葵は夕食の片付けができるのがありがたかった。
 
そんなふたりの姿を見つめてふと思いあたり、葵は昼間に届いた白河大介からのメッセージを開く。

子供たちについて話があるから土曜日の午後白河病院の理事長室へ来い、という内容だ。
 
……本当は行かない方がいいのだろう。
 
晃介がいない間に、なんとかして葵に諦めさせようと揺さぶりをかけてくるのは明白なのだから。

それでも"子供たちについて"という部分に葵は引っかかっている。両親と対立しているとはいえ、白河大介は紛れもなく双子の祖父だ。

そのまましばらく考えたのち、葵は携帯の画面をタップして母の電話番号を開いた。
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