双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「晃介さん、自分ついてたくさん知ってほしいからって、いろいろおしえてくださいました。今行っておられるスウェーデンの研修は、亡くなったお母さまと同じ症例を治すための研修なんだっておっしゃって……。ふふふ、カッコよかった」
 
山里が娘の言葉に頷いた。

「この通り上部だけの話ではなく、少し深い話もしたようだ。娘は、彼となら幸せな家庭を築けると確信したそうだよ。それは晃介君も同じだったようだ。見合い後すぐに話を進めてほしいという返事をもらった。」

山里の口から語られる晃介は、葵の知らない姿だった。また頭に灰色がかった疑問が浮かぶ。

——どうして彼はこのことをなにもおしえてくれなかったのだろう? 

例えば付き合いで仕方なく見合いをしたのだとしたら、隠す必要はないはずだ。
 
山里が同情するように葵を見て、口を開いた。

「一方で、君とはどうだね? 子供まで作っておいて籍すら入れていないじゃないか。冷静に事実だけを見れば、晃介君の気持ちは明白だ」
 
美雪が憐れむように葵を見る。その視線も、葵の心を蝕んだ。
 
彼女の髪は綺麗にカラーリングしてあって手入れが行き届いている。

メイクには一ミリの隙もなく、爪も上品な花柄のネイルがほどこしてあった。

どれもこれも双子を育てる葵には到底できないことだった。
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