双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
乱暴に閉まるドアの音に、見送ろうと立ち上がりかけていた大介が、諦めたようにストンと座る。そして葵を睨んだ。

「君は、自分がなにをしたかわかっているのか? 相手は厚生労働大臣政務官だぞ! もしこのことが……」
 
とそこで、言葉を切り顔を歪めて頭を抱える。

うずくまるようにソファにもたれかかる彼は、顔色がすこぶる悪い。

「……理事長、大丈夫ですか?」
 
自分が罵られているのも忘れて、葵が尋ねると、大介が「うるさい!」と喚いた。
 
でももうさっきの話の続きをする気はないようだ。

「……帰ってくれ」
 
力なくそう言って、両手で顔を覆った。

「くそ、もう時間がないのに……」
 
葵はしばらく黙って彼を見つめていたが、立ち上がり部屋を出た。
 
エレベーターで階下に降りてエントランスを抜けると、灰色の空から雪がちらついていた。
 
葵は立ち止まり空を見上げる。
 
彼のいるストックホルムも雪が降っているだろう。
 
するとその時、鞄の中で携帯が震えた。

確認すると、帰国を知らせる晃介からのメッセージだった。
 
手術は成功し、患者の経過も順調だから、予定より少し早い二日後の便で帰るとある。

【早く君と子供たちに会いたい。愛してるよ】


いつもと変わらずに自分たちに愛の言葉をくれる晃介からのメッセージに、葵の胸は熱くなった。
 
自分のしたことは間違いないと確信する。目を閉じて、携帯を抱きしめた。

「晃介、私頑張ったよ」
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