双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「確かに、政務官と娘さんには会ったけど、俺は向こうが見合いのつもりだとは知らなかった。そもそも娘が来るなんて聞いていなかったんだ。ただ白河病院の理事として政務官と顔合わせをするとだけ聞かされていていた。さすがにその場でことを荒立てるようなことはできなかったけど、解散してからすぐに、父には断るように言っておいたはずなのに。……婚約なんて馬鹿げた話だ!」


その言葉と真摯な眼差しに、葵はすぐに頷いた。
「うん、信じてる」
 
晃介が安堵したように息を吐いた。でもすぐにまた険しい表情になる。

そして心配そうに問いかけた。

「その面子に囲まれたなら、ひどいことを言われたんじゃないか?」

「……養育費と手切金を渡すから晃介とは別れろって言われた」
「くそっ!」
 
晃介が金網を拳で叩く。彼にしては珍しく乱暴な言葉を口にして、怒りの感情をあらわにする。

「俺が見合いを断ったから、調べたんだな。相変わらず、やることが汚い」
 
そして申し訳なさそうに葵を見た。

「葵……」

「わ、私は大丈夫。どうしてそうなったのかを確認したかっただけだから」
 
少し慌てて葵はそう言うが、彼はまったく納得できないようだ。

「だけど俺がいない間に……息子を調べるなんて、どうかしてる」
 
金網を掴み悔しそうに言う。それだけで葵の心は慰められた。自分にはこんな風に怒ってくれる味方がいる。

「ありがとう晃介。私、本当に平気よ。晃介さえいれば、なにを言われても」
 
彼は自分のすぐそばにいる。そのことを噛み締めて、葵はいよいよ本題に入る。
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