双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
「あのね、晃介。でも……その……理事長は、今回はじめて私たちのことを知ったわけじゃないの」
 
晃介が怪訝な表情になった。

「私、私ね……二年半前にも一度、理事長とお会いしてるの。晃介とのことで、呼び出されて……」
 
緊張で少し声が震えてしまう。
 
その内容に、晃介が眉を寄せたまま絶句している。葵の言いたいことの方向性がなんとなく見えはじめているのだろう。
 
葵の胸がズキンと痛んだ。自分の話す事実が彼の心を傷つけているのが、つらかった。

……けれど、すべて話さなくては。

「晃介、私があの時あなたになにも言わないで姿を消したのは、理事長からの指示だったの。……理事長は私は晃介に相応しくないから、別れて地元へ帰りなさいと言ったわ。でなければ、病院をクビにして看護学校の奨学金を一括で返済してもらうって……」
 
とそこで、奨学金の仕組みと自分が奨学生だということを彼に話していなかったと思いあたる。

「私、奨学金を借りて看護学校を卒業したの。卒業後、白河病院で三年働いたら返済不要になる契約で三年以内にやめたら、一括で返済しなくちゃならないの。……理事長は言う通りにすれば地元に働き口を用意する。奨学金も返済しなくていいっておしゃった。……私、四百万円なんて大金、用意できないし、看護師としての経験も浅くて再就職する自信もなかったから、理事長の言う通りにしたの。……ごめんなさい」
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